用地買収予算内で対応 (毎日新聞)
絶滅危惧種の淡水魚「アユモドキ」保護のため府と亀岡市が24日に正式表明した球技場「京都スタジアム」(仮称、亀岡市)の建設計画の予定地変更。新たにJR亀岡駅北側に隣接するエリアの用地(3・2ヘクタール)を取得する必要があるが、山田啓二知事はスタジアム整備計画全体の府の予算156億円と亀岡市の50億円の計206億円の枠内には収まる見通しと強調。亀岡市による用地買収に十数億円の範囲で支援が可能との考えを示した。【野口由紀】
この日午後、山田知事と亀岡市の桂川孝裕市長は京都市上京区の府庁で、4月に予定地変更を提言した環境保全専門家会議の村上興正(おきまさ)座長と面談。桂川市長は新たな用地の全地権者49人から書面で売却の同意を得たことを報告した上で、座長提言に基づいた計画推進を府に要望した。これを受ける形で、山田知事は▽地元の理解▽予算枠内での対応▽アユモドキの保全−−の3条件を満たしたとして、駅北隣接エリアで建設を進めると述べた。
山田知事は、駅北エリアの用地造成が完成し、河川から離れることで地下貯水ピット整備が不要になることや、アクセス道路整備が減少することなどを理由に、整備費は当初計画より十数億円縮減できるとの見通しを示した。34億円かかるとみられる亀岡市の用地買収には、その範囲で支援できると説明した。
新たな予定地となったエリアには商業施設やマンションなどの建設を想定していた。桂川市長は「本来、商業エリアで人が増える場所。(当初計画の)都市公園の中のスタジアムとの違いを出してほしい」と述べ、にぎわい創出への期待を寄せた。
亀岡盛り上げる/行政は説明不足 地元、賛否さまざま
京都スタジアム(仮称)の建設予定地変更に対し、地元の亀岡市では賛否さまざまな意見が聞かれた。
新たな建設予定地となったJR亀岡駅北エリアの開発を、今年2月から進めてきた亀岡駅北土地区画整理組合の関本孝一理事長は、「事業はもともと駅北地区のにぎわい創出が目的。駅から直接アクセスできるスタジアムを核に、より大きな地域活性化に向け全力で取り組んでいきたい」と意気込みを語った。
新たな建設予定地から亀岡駅を挟んだ駅南地区にあり、約40店舗が加盟する亀岡駅前商店街振興組合の青木智理事長は「4月の環境保全専門家会議の提言で、もうスタジアム建設は駄目だと諦めていたので本当にうれしい。駅北地区とも連携して、亀岡全体を盛り上げていきたい」と歓迎した。
一方、駅北開発・スタジアム関連訴訟を支える会の高向吉朗代表は「建設予定地を移転しても、水害対策などへの懸念は消えない」と反対する。「アユモドキへの影響も、提言では『移転で軽微になる』としているだけで、100%大丈夫というお墨付きはない。行政側の説明不足を感じる」と話した。【礒野健一】
府の進める「京都スタジアム」(仮称)整備計画をめぐる経過
2010年11月 「府におけるスポーツ施設のあり方懇話会」設置
11年 1月 懇話会が「スタジアムの新設を検討すべき」と提言
11〜12月 府がスタジアム建設予定地を公募。亀岡市、京丹波町、京都市、城陽市、舞鶴市の5市町が応募
12年 5月 亀岡市、京都市、城陽市の3カ所を重要調査地域として選定
12月 府が亀岡市のJR亀岡駅北側エリアにすると表明
13年 3月 日本魚類学会などがアユモドキの絶滅の恐れがあるとして府と市に対して計画の白紙撤回を求める要望書を提出
13年 5月 アユモドキとの共生など自然環境保全策について検討する「環境保全専門家会議」を初開催。以降、アユモドキの生態調査などを繰り返し行う
15年 6月 府公共事業評価第三者委員会が設計事業を了承
11月 国際自然保護連合がアユモドキを絶滅危惧種に指定
16年 4月 環境保全専門家会議が建設場所を「亀岡駅北土地区画整理事業地」に変更するよう提言
8月 府と亀岡市が建設場所の変更を表明以上、毎日新聞のWebサイトより引用