裁判報告-亀岡駅北開発問題

亀岡の駅北開発差し止めとスタジアム建設に関わる裁判が、8月10日、京都地方裁判所で行われました。

■駅北土地区画整理組合設立認可取消訴訟(開発差し止め訴訟)

この裁判の焦点は、①そもそも、裁判の申立人に原告となる資格があるか(原告適格)②亀岡駅北埋立によって、水害被害が大きくなるおそれがあるのか。また、埋立を認めた亀岡市長の行為に、行政の裁量権を超えた違法があるのかどうかということです。

被告亀岡市は「10年確率(10年に1度の洪水に耐えられる)の河川改修ができているから、駅北開発は許される。このことは、行政一般として昔から他の自治体でもやられてきたこと」と主張しています。

原告は具体的な被害範囲の調査・分析と計算に基づき水害被害が拡大すると主張しています。また、30年確率の河川改修をめざすというが、実現の見通しはなく、近年の異常気象でさらにその危険度は増しているとも指摘しています。

 ■裁判長は双方に対し何を求めたか

裁判長は亀岡市に対し、「開発に適している、または適していないとする場合の判断基準を示して下さい」と求めました。

また、原告に対しては、「一般的な『おそれ』という基準とはどのようなものか。また逆に、開発可とする場合の基準をどのように考えているか示して下さい」と求めました。

このことは、亀岡市が主張してきた、「裁判を打ち切り、すぐに判決を出されたい」という主張がくずされ、駅北の埋立を行う土地区画整理組合の設立を認めた処分が正しいかどうかを被告亀岡市に明らかにさせるということを求めたものであり、裁判の審理が中味の検討に入るということを意味している点で、裁判進展上重要な意味を持ちます。

京都府は、亀岡市を含む桂川上流圏域のみ公開していない「浸水想定区域図」(洪水ハザードマップ作成のもとになる図面)の情報公開請求に対し、「府民が混乱するおそれがあるので、亀岡市と協議ができてから公開する。」として非開示としました。これに対し裁判で公開を求めたところ、被告側弁護士は「検討する」と答えました。

また原告側は、近年豪雨が増加していることを示すため、過去40年間の1時間あたりの降水量データも裁判所に提出しました。9箇所の水害被害の現場を裁判長に直接みてもらう申請(現地検証手続き申請)に対しては次回の裁判で判断が下されると思われます。

今回さらに原告側は、国土問題研究会理事長と、3人の原告に対して証人尋問をおこなってもらうよう申請しました。

この現地検証と証人尋問は、原告がどんな恐怖感を持ったのか、被害はどんな状況だったのかを裁判官に知ってもらい、水害被害の恐ろしさを実感してもらう手続きであり、実現すれば大きな意味を持つことになります。

 ■スタジアムに関わる違法公金支出差し止め訴訟(住民訴訟)

また、住民訴訟の方では、京都府と亀岡市に対し「ムダな支出を止める」よう求めています。今回は京都府に対し、「B/C(費用対効果)の算出方法がおかしい」という主張をおこないました。また、亀岡市に対しては経済効果があるなどといいながら、B/Cを独自に算出していないことの違法性も問いました。

これに対し、被告京都府側弁護士からは、「道路や美術館など公共性のある事業はB/Cだけで判断するものでない」などという発言が飛び出しました。

今まで、京都府の「事業評価調書」で、B/Cは1.5以上あると強調しておきながら、「いまさら何をかいわんや」ですが、プロスポーツに提供するスタジアムが道路や公園と同じ公共施設とする論だてには無理があります。また、京都府が「稼げるスタジアムをめざす」としていること(運営を民間へ丸投げするPFIと呼ばれる手法)とも矛盾します。

裁判長からは、便益に関わって、外部性(交通渋滞や水害復旧費用などのマイナス便益)についても確認のコメントがありました。これについては、次回の裁判で原告が準備書面の中で主張する予定です。

 ■次回裁判は判決に向けて重大な山場

ただ、スタジアムは建設の基礎工事にかかっており、次回の裁判は、裁判官が現地検証を実施するかどうかの判断をする重大な山場を迎えることになります。 この間傍聴者は毎回30人~40人超に達しており、当初20人弱の法廷でよいといっていた裁判長の言動に変化が感じられます。

次回の裁判は下記日程で行われますので、ご案内いたします。

 

なお、次回裁判の少し前の10月14日、「亀岡駅北開発・スタジアム関連 裁判報告会」を行います。裁判の状況についてのわかりやすい解説と、弁護士からの詳しい報告があります。一人でも多くの方にこの裁判を知っていただきたいと思いますので、どうぞお誘いあわせの上ご来場下さるようお願い申し上げます。

2018.8.11.

京都スタジアムに関わる違法公金支出差止訴訟(府)原告代表

亀岡駅北開発・スタジアム関連訴訟を支える会代表

高向 吉朗

裁判報告-印刷用PDF 裁判報告20180810

お知らせ

『亀岡駅北開発・スタジアム関連 裁判報告会』

日 時  10月14日(日)午後3時~午後5時

場 所  ガレリアかめおか 2階研修室 (どなたでも参加いただけます。)

次回裁判 

日 時  10月24日(水)午後3時~午後4時

場 所  京都地方裁判所203号法廷 (どなたでも傍聴いただけます。)

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