亀岡スタジアム 甘い見通し経緯検証を (京都新聞)

亀岡スタジアム計画見直し 甘い見通し、経緯検証を

 京都府の球技専用スタジアムについて、府と建設予定地の亀岡市が計画の見直しを迫られている。周辺に生息する国の天然記念物アユモドキの調査に時間を要するとして、環境専門家会議が建設予定地の移転を提言。開発と環境保全を両立する難しさが浮き彫りになった。移転を進めるとしても、こうした事態に至った経緯をしっかり検証する必要がある。
 専門家会議は、スタジアム整備と共存するアユモドキの保全策を議論する目的で府と市が設置した。保津町の建設予定地で生態調査や実証実験を行っている。昨年度に保全策をまとめる見込みだったが、さらに調査が必要と判断。早期のスタジアム整備に向け、近くのJR亀岡駅北側の土地区画整理事業地へ建設予定地を変更するよう提言した。
 しかし、調査の長期化を懸念する意見は専門家の間で当初からあった。2013年5月の初回会合で一部の委員が「(府と市が計画する)スケジュール内に収めることは難しい」と指摘。14年にはスタジアムの完成が1年遅れることになった。
 スタジアム計画が難航している要因は、こうした府と市の見通しの甘さにあるといえる。計画では建設予定地の一部にアユモドキの保護区域を設けるとしたが、計画決定後に全国の環境団体や学者が相次いで見直しを求めた。
 市議からは問題の所在を追究する声があがる。桂川孝裕市長は「事業の進め方は間違っていなかった」とするが、市は保津町の建設予定地を約14億円で購入しており、対応が問われる。
 市は6月下旬、移転先の地権者と買収に向けた交渉を始めた。しかし、事業を進めるとしても課題は多い。
 新たな用地費の確保はその一つ。桂川市長は道路整備費などを抑えることでスタジアム関連費50億円の範囲内に収めるとしている。だが、当初計画と異なる支出に市民の理解が得られるか未知数だ。
 さらに、土地区画整理事業地では一部の市民が開発による水害拡大を懸念し、土地区画整理組合の設立認可取り消しを市に求める住民訴訟を起こしている。
 13年の台風18号では、近くを流れる桂川(保津川)から水があふれ、事業地が浸水した。市は盛り土をするため安全性に問題はないとの認識を示すが、不安視する市民は少なくない。
 計画の大幅見直しで、市民がスタジアムに注ぐ目は厳しくなっている。保津町の建設予定地の測量に際し、市の委託先が別のデータを流用した問題も明るみに出た。過去の経緯を含め、こういった疑問に一つ一つ丁寧に答えることが市には求められる。
 府はこの間、亀岡市民に対し説明の場を持っていない。スタジアムが必要であるならば、建設主体自ら理解を得ていく努力が必要だ。
[京都新聞 2016年7月20日掲載]

以上、京都新聞のWebサイトより引用